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 １９６０年（昭和３５年）〜６４年（昭和３９年）
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☆『赤坂の姉妹 夜の肌』【1960年(昭和35年)川島雄三監督】 長女の夏生（淡島千景）は赤坂のバー「しいの実」のマダム、次女の秋江（新珠三千代）も同じバーで働き、三女冬子（川口知子）は学生運動に熱中する大学生です。夏生は政治家との仲で料亭を開く計画するが、反発する秋江は家を飛び出します。冬子は姉二人の生活に反発して学生運動にのめり込みます。欲と色の三姉妹の戦いを赤坂を舞台に展開します。由起しげ子の「赤坂の姉妹」の映画化です。東京五輪前の昭和35年頃の赤坂の幅径を端することができます。 |
☆『いろはにほへと』【1960年(昭和35年)中村登監督】 警視庁捜査第二課の松本刑事（伊藤雄之助）は、いろはカルタのように実直に人生を歩んでいます。匿名組合を利用して急速に成長している投資会社を内定しますが、なかなか事件の立証ができません。しかし、ニューヨークの株価暴落で、急速に資金繰りに窮し、利息や元本の払いができなくなり、詐欺容疑での立件が視野に入ってきます。金で政治家を動かす天野理事長（佐田啓二）らは、色仕掛け、お金で、松本刑事に揺さぶりをかけますが、なかなかを乗ってきません。橋本忍原作、脚本の社会派映画です。好青年を演ずることが多い佐田啓二さんが野心家を演じます。また、ベテラン名優の伊藤雄之助さんと宮口精二さんの料亭での対峙は緊張感が走ります。 |
☆『命との対決』【1960年(昭和35年）酒井辰雄監督】 やくざの弟大江勉(安井昌二)を更生させよとする過去に傷を持った牧師の兄大江卓（森美樹）の物語です。主演は若くして事故で逝去した森美樹さんと安井昌二さんです。キャバレーの歌手役の岸洋子さんが出演しています。また、ジプシーの政役で、曽根幸明の名で「圭子の夢は夜ひらく」作曲の藤田功さんが歌声を披露しています。当時、森美樹さんと噂の瑳峨三智子さんはシスター役で、引退直前の草島競子さんが飲み屋の女将役で出演しています。。 |
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☆『あんみつ姫の武者修業』【1960年(昭和35年)大曽根辰保監督】 世間知らずなお転婆娘の「あんみつ姫（鰐淵晴子）」が、城内の生活に退屈し城を抜け出し旅回り一座に引き起こす騒動を描いた喜劇時代劇です。 倉金章介さんの漫画の映画化で、主演は鰐淵晴子さん、人気歌手や喜劇人も多数出演し、歌と踊りありの正月封切の娯楽映画です。当時のスター歌手が出演し唄う。主演鰐淵晴子さんは主題歌「小鳥とあんみつ」、三波春夫さんは座長藤九郎役「北海盆歌」、島倉千代子さんは千鳥太夫役「花散る下田」、守屋浩さんは艶歌師浩ちゃん役「有難や節」「東京へ戻っておいでよ」を披露します。 |
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☆『「粘土のお面」より かあちゃん 』【1961年(昭和36年)中川信夫監督】 豊田正子さんの『粘土のお面』の原作の映画化です。戦後間もない東京の下町に暮らす貧乏のどん底に喘ぐ四人家族を温かく、明るく、逞しく描いた作品です。 ブリキ屋銅由の父ちゃん由五郎（伊藤雄之助）は、腕は良い職人ですがお人好しなうえに酒好きで貧乏暮らしを余儀なくされています。かあちゃんのお雪（望月優子）は、いつもお金の工面で苦労します。小学生の正子（二木てるみ）は、明るく貧しさに負けない元気な子供で、弟の稔坊（津沢彰秀）の面倒看もよく、担任の小林芳子（北沢典子）先生を慕っています。小林先生は生れ故郷の群馬に去り、お金の工面も限界に来た家族は長屋から夜逃げをします。 貧しく苦しい生活を暗い影を見せずに温かく描いた中川信夫監督の秀作です。伊藤雄之助さんと望月優子さんの夫婦役の好演もありますが、子役の二木てるみさんの健気な演技も忘れることができません。20年前に池袋文芸座の「中川信夫監督特集」で初めて観て感銘を受けました。また、その時にゲストに北沢典子さんが招かれ当時のエピソード話しも興味深く聞いた思い出の作品でもあります。 |
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☆『街に気球があがる時』【1961年(昭和36年）井田探監督】 気球広告会社のアルバイトで知り会う貧乏学生男女の青春を描きます。大学生の川本保夫（長門裕之）は気球広告会社でアルバイトで同じ大学の音勝りの丸根敦子（吉行和子）と知合います。一方、社長令嬢の泉万里子（武内悦子）が保夫に近づいてきます。しかし、我が儘な性格の万里子に愛想を使し、敦子の良さに気付きます。冒頭のタイトル・クレジットの出し方が斬新で、再開発前の京王帝都電鉄（現：京王電鉄）調布駅北口の風景で映し出されます。また、上野松坂屋の豪じゃすな階段やレトロなエレベータも登場します。東京の空の大きさも印象的です。また、日活ニューフェイス高島史旭（竜崎勝）さんや子役で江木俊夫さん三も出演しています。 |
☆『縞の背広の親分衆』【1961年(昭和36年)川島雄三監督】 南米から帰国したやくざ守野圭助（森繁久彌 ）が、やくざの勢力争いに捲込まれるドタバタ喜劇です。俳優座養成所出身でホキ徳田さんも所属していた三人女性Ｇ”スリーバブルス”清々しいハーモニを披露します。 愛川欣也さんのデビュー映画で、渥美清さんも出演しています。東京五輪直前の変貌する東京の風景が堪能できます。【画像上：フランキー堺さん・愛川欣也さん・桂小金治さん、中：スリーバブルス・フランキー堺さん、下：有島一郎さん・渥美清さん・西村晃さん】 |
☆『大人と子供のあいの子だい』【1961年(昭和36年若杉光夫監督】 成績優秀だが貧困家庭の中学生平井明夫（浜田光夫）は、同級生の杉下京一（鈴木寿雄）の父洋介（宇野重吉）の尽力で高校進学の夢が現実なりますが、家族の為に働く事との間で悩みます。現実から逃げないために家族の為に働くことを選択します。「青春は挫けない心」とのメッセージ性が含まれています。クレジットで新人の松原智恵子さんが同級生坂口智佐子役で出演しています。 |
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☆『恋愛ズバリ講座』【1961年（昭和36年）三輪彰監督・石川義廣監督・石井輝男監督】 三部構成のオムニバスです。眼鏡姿の出演者が印象的です。第一話「吝嗇」の眼鏡でニヒルさが無表情で棒読みに変身の天知茂さんはケチな会社社長役です。第ニ話「弱気」の眼鏡で侠客も気弱なサラリーマンに変身の菅原文太さんは役人と間違えられます。第三話「好色」の眼鏡で色気を隠し幼稚園の先生の三原葉子さんは、騙された振りをしますが逆に騙す悪女です。ノーギャランティの新東宝オールスターが出演している公開年に倒産した新東宝の乱れ咲きの恐るべき作品です。 |
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☆『この若さある限り』【1961年（昭和36年）藏原惟繕監督】 高三の行雄（浜田光夫）は国語教師の河合（吉行和子）先生に情熱を傾け告白するが、相互理解のない行動では二人は結ばれいと悟ります。行雄は同世代の河南亮子（吉永小百合）との仲を修復し、河合先生は婚約者の永瀬英助（内藤武敏）の事務的な結婚を決意し、二人は新しい道を歩みます。 恋愛の”自由"には、常に社会への”責任”を伴う石坂洋次郎文学の倫理の世界です。ロケは田園調布付近で、高校ロケ地は田園調布雙葉学園、1966年の立体交差前の東急東横線と環八の踏切は、1940年の映画『姉妹の約束』にも登場します。 |
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☆『あの空の果てに星はまたたく』【1962年(昭和37年)関川秀雄監督】 瀬戸内海の佐柳島から多度津の高校へ毎日巡航船で通っていた早苗（丘さとみ）とその家族、友人、恋人、島の人々の貧しくも逞しく生きる姿を描きます。早苗の兄義夫（千葉真一）は、貧しさから脱出するため父（山縣勲）の反対を押し切って関西に行きます。早苗の恋人三郎（水木襄）は、家の窮地をすくために高校を辞めて大坂に出て働きます。義夫は病気で死に、三郎はやくざの喧嘩に巻き込まれて、警察から追われる身になっていきます。それでも早苗は三郎の刑期を待ち、明日に生きていこうとします。新藤兼人さんのオリジナル・シナリオで高度成長直前の日本の青春を描いた作品です。瀬戸内海の島で、現実を直視し、貧しさに負けずに生きていこうとする早苗を中心にした若者の姿を中心に健気さが印象に残ります。 |
☆『花の才月』【1962年(昭和37年)中島義次監督】 石田ひろ子（田代みどり）は両親を次々に亡くし弟（山崎二郎）と二人になるが、寺の息子山川元享（川地民夫）などの周囲の人々の助けで明るく生きていくます。しかし、ひろ子の売る花を買った村の人々が災難に会い、ひろ子を村から追出そうとします。しかし、山川や和尚（佐々木孝丸）尽力で、村人の誤解も晴れて新しい居場所に向います。歌手の田代みどりさんの歌声を堪能でき、佐々木孝丸さんや初井言栄さんなどの脇役陣の演技が煌ています。主題は山川元享の言葉の仏教用語「拈華微笑」（言葉を使わず、心から心へ伝えること）です。 |
☆『フランキーの宇宙人』【1962年(昭和37年)菅井一郎監督】 宇宙に憧れる青年境田栄（フランキー堺）は、屋根から落ちて気を失います。宇宙人が地球に調査に訪れていること知った木下博士（菅井一郎）や市村記者（安部徹）らとともにその陰謀を砕こうとしますが、逆に円盤に乗り、彼らの星に行きます。しかし、眼が醒めて、夢だと知ります。監督は戦前戦後と俳優として活躍した菅井一郎さんです。フランキー堺が青年境田栄や宇宙人など５役ををこなし、絶妙なドラマーの腕前も披露しています。また、ギャク担当と本編では新聞記者で永六輔さんが出演しています。 |
☆『今年の恋』【1963年(昭和38年)木下恵介監督】 高校二年生の同級生で横浜の会社員の次男の山田光（田村正和）と銀座で料亭「愛川」を営む相川の長男の一郎（石川竜一）は仲のいい友達です。しかし、二人は勉強もせずに喧嘩に恋愛に熱中して、それぞれの兄の正（吉田輝夫）と姉の美加子（岡田茉利子）の頭痛の種でした。この２人の兄と姉は弟たたちをきっかけに出会い、最初は反発し合いいながらも次第に惹かれていき、恋していく姿をコメディタッチで描いた物語です。岡田茉利子の好演が光る非常に良質の喜劇映画です。大きなスクリーンで、多くの観客とともに、大声で笑って楽しむ映画です。映画を観て、幸福感を味わえる秀作です。また、1967年（昭和42年）に加藤剛さんと栗原小巻さんの出演で、木下恵介劇場枠でテレビドラマ化されています。 |
☆『アリバイ』【1963年(昭和38年)牛原陽一監督】 電機会社の経理士中島芳夫が射殺死体となって発見されます。捜査本部では、米軍キャンプから盗まれた八挺の１挺であること突き止めて、犯人を追います。しかし、容疑者にはアリバイがあり、被害者の電機会社の協力を得られず、捜査は暗礁に乗り上げます。影の黒幕は、海外逃亡を図りますが、被害会社の社長の決断で、犯人逮捕に至ります。エリート刑事の畑中英次（二谷英明さん）とベテラン刑事の佐川朝吉（宮口清二さん）が、人間ドラマを交えて犯人に迫ります。犯人役の大野役の小高雄二さんが好演しています。警視庁の全面協力で真に迫る映画です。また、横浜駅や渋谷駅なども登場し、昭和30年代の街や人々の風景も楽しめます。 |
☆現代っ子』【1963年(昭和38年)中平康監督】 五輪前年で変貌する東京、矛盾を抱えながらも逞しく生きる子供の視点で描きます。貧しくもバラバラに住んでいるが深く結びついている家族を通して、経済成長で人間関係が崩壊していきます。石田運輸を経営する石田役の小沢栄太郎さん、夕食時に艀やダルマ船の国家的な役割を雄弁に語る場面と艀の船頭の田原老人役の嵯峨善兵さんが、役割やそのメリットなどを市川好朗さんと鈴木ヤスシさんの前で話す場面は印象的でした。艀船頭役の嵯峨善兵さん、定年退職の寂しさで酒に溺れる日々。自殺未遂を助ける好夫役の市川好朗さん、”現代っ子”の自分達の将来を暗示します。 越前堀（亀島川）の南高橋付近や佃島小橋や佃島渡し船の乗船所などの佃島などが舞台です。 |
☆『見上げてごらん夜の星を』【１963年(昭和38年) 番匠義彰監督】 1959年の夏に上演された同名ミュージカルの映画化です。原作は永六輔、音楽はいずみたくで舞台では定時制高校三年生に坂本九（初演は伊藤素道）、全日制の友達の九重祐三子（初演は橘薫）、母親役に越路吹雪、同級生はダニー飯田とパラダイスキングが演じて好評を博しました。物語は、定時制三年生の湯浅太平（坂本九）の友人、教師（菅原文太）や全日制の友達（榊ひろみ）たちが。次々起こる社会の矛盾や課題にぶち当たりながら友情や若さで乗り越えていきます。この同名の主題曲は坂本九が歌って1963年にレコード大賞作曲賞を受賞し大ヒットしました。その他「小さな街の小さな学校」「勉強チャチャチャ」などの印象的な曲が挿入歌として使われています。 悲しいときも、楽しいときも、夜空には輝く小さな星は、僕らのこころの太陽だよ言い聞かせて、昼間は工場で働き、夜は勉強する未来へ生きていく多くの若者の姿がこの映画にあります。いずみたくの音楽も素晴らしく、最後に校舎の屋上で主題歌を合唱する場面は印象的でした。いつも上を向いている姿は、今は辛くても希望の未来を持てた時代であることを表現しているように思います。 荒川高校が舞台ですが、ロケ地は都立荒川工業高校です。隣には東京スタジアムがあり、毎日大映オリオンズの本拠地でした。その後、ロッテオリオンズに譲渡されましたが、赤字経営が続き、1971年に球場閉鎖となり、現在は住宅の敷地になっています。 |
☆『サムライの子点』【1963年（昭和38年）若杉光夫監督】 小樽の貧民部落を舞台に社会や教育課題の対処と同時に自身の解決意識の重要性を前向きに生きる少女視点で描きます。「上を向いて歩 こう」を唄う子供たちに、日本全国的には東京五輪前年の”光"の高度 経済成長に対する”影”の部分を映し出します。映画の娯楽、浄化など 様々な効用の社会に焦点をあてます。 小樽などでロケを多用し効果的に。父・太市役の小沢昭一さん、 妻・やす約の南田洋子さん、田島ユミ役の田中鈴子などは深刻な内容 を逆手に、ユーモラスに社会問題を観る人に訴求。原作は 舞台の小樽 出身の児童文学者の山中恒著同名小説。日活映画では『現代っ子』 （1963年）や映画『先生のつうしんぼ』（1976年）など子供の視点で社会を炙り出しが秀逸。大人文学は子供の文学に成り難いが、子供の文学は 大人も読める文学にななります。学生時代に訪れた廃線の名寄本線「元紋別駅」も懐かしく感じます。 |
☆『二十一歳の父』【1964年(昭和39年)中村昇監督】 大学生の酒匂基次（山本圭）は、優秀な兄酒匂市郎 （ 高橋幸治）に劣等感を抱き、家を出て、テレビの殺陣のパチンコ屋でアルバイトに精を出します。基次は家族の心配を他所に盲目の少女好子（倍賞千恵子）と結婚します。基次の大学の友人越秋穂 （ 勝呂誉）は、知合って間もない同級生の岩間恭子 （ 鰐淵晴子）にプロポーズをします。基次の母（風見章子）の死と入れ替わる様に女の子が生まれます。しかし、好子と赤ん坊は交通事故で死に、基次も自殺をして、二人の後を追います。曽野綾子さん原作の同名小説の映画化です。暗澹たる気持ちになる映画ですが、秋穂が恭子に突然のプロポーズし、「女の子は、相手の就職とか心配するんだろうな」の問いに「たいていの人が生きてるんじゃ」に明るい未来を感じます。武満徹さんの音楽が印象的です。 |
☆『君も出世ができる』【１964年（昭和39年）須川栄三監督】 時代劇ミュージカルの傑作が「鴛鴦（おしどり）歌合戦」なら。現代劇は「君も出世ができる」ではないだろうか。旅行会社の東洋田観光に勤める積極的でハッスルな山川（フラッキー堺）とノンビリとした億手な中井（高島忠夫）が演じるサラリーマンミュージカルコメディ映画である。アメリカ映画「努力しないで出世する方法」を意識した作品である。音楽は黛敏郎・作詞は谷川俊太郎です。オリジナル主題歌１３曲が画面一杯で楽しさを伝えてくれる。特にアメリカ帰りの社長の娘・陽子（雪村いづみ）を中心に歌う「アメリカでは」はアメリカ映画のミュージカルを観ているようである。また、丸の内を想定した「ウエストサイド」ばりの場面は見応えがあります。 浜美枝・中尾ミエ・有島一郎・益田喜頓の俳優人を配し、ゲストに植木等も出演しています。何回観ても楽しい映画です。 |
☆『海抜０米』【1964年（昭和39年）川頭義郎監督】 曽野綾子さんの同名小説の映画化で、東京下町の三流女子高を舞台に新任の女性の峠百合子（倍賞智千恵子）教師の視点から捉えた青春学園映画です。同時期に同じ高校を舞台にした青春学園小説(映画)石原慎太郎さんの『青春とはなんだ』が男性の視点で描かれたのは対照的な作品です。自ら命を絶つ柏木頼津子役には映画デビュー作となる岸久美子さんが、幸薄な高校生役を好演しています。台詞が確りしており、見応えのある作品になっていました。曽野綾子さんの作品らしく、現実を踏まえながらも一光の希望を暗示する終わり方は、観ている者に安心感を与えます。私が１年くらい前にメールでリクエスト要望をした映画でもあります。 |
☆『青い目の嫁はん』【1964年(昭和39年)川頭義郎監督】 米国出身の留学生の女性エルザ・ハドソン（イーデス・ハンソン）が文楽の人形遣い使吉田小吉役（藤山寛美）と結婚する恋愛喜劇映画です。主演のイーデス・ハンソンさんが1963年に文楽人形遣い吉田小玉さんとの結婚を題材にしていますが、映画公開の翌年離婚しています。テニスラケットのスパゲッティの場面は映画『アパ−トの鍵貸します』のジャッレモンの場面を借用しています。また、大阪「朝日座」の劇場風景、1963年に収益不振で松竹が文楽座を手放しています。戦後の労働争議で分裂した”三和会”と”因会”が分裂解消し、朝日座に改称しますが1984年閉館し、1984年には国立文楽劇場開館しています。 |
☆『にっぽんぱらだいす』【1964年(昭和39年)前田陽一督】 ＧＨＱ占領下のの公娼制度、その廃止、赤線著隊の誕生の中で孤児満子（香山美子）は、遊郭の主人（加東大介）に育てられ、その店で働くことになります。しかし、赤線の最後の日に外の世界を知らない満子は自殺をします。翌日、新しい出発をする街と人々を他所に、を満子を乗せた自動車がひっそりと遊郭を出て行きます。前田陽一さん監督デビュー映画です。終戦直後から昭和33年までの売春防止法施行までの公娼制度・赤線で逞しく生きる人間模様を描く喜劇です。戦後の風俗が軽快に展開されます。施行前日の寂寥感と翌日の明朗さの極端な対比や山本直純さんの音楽が秀逸です。また、人生を前向きに生きる人々には圧倒されます。 |
☆『こちら婦人科』【1964年(昭和39年）田畠恒男監督】 通称がま先生の病院婦人科医長・赤金次郎（長門勇）に診察に来る人間模様を通して社会をユーモラスに描きます。主演の長門勇さんが好演が光ります。長門裕之さんと津川雅彦さんの妹・加藤勢津子さんが理事長の娘役、その恋人役にデビュー間もない岡崎二朗さんが出演しています。55年前の渋谷のセンター街も懐かしく感じます。 |
☆『君たちがいて僕がいた』【1964年(昭和39年)鷹森立一監督】 小田原の高校に通う佐藤洋（舟木一夫）と久保知恵子（本間千代子）は、喧嘩友だちです。両親のいない洋は芸者をして生活を支え、洋を大学に行かせたい姉の幸奴（宮園純子）がいます。洋は姉に感謝をしながらも姉の思いを負担に感じ、姉を毛嫌いします。ある時矢吹先生（千葉真一）と幸奴の根も葉もないスキャンダルに巻き込まれ、矢吹先生は退職の危機を迎えます。洋と智恵子ら同級生たちは、矢吹先生を救うためPTA総会に乗り込みます。富島健夫さん原作の映画化です。主演の本間千代子さんには個人的な思い出があります。40年以上前になりますが、亡き父が寿司屋を経営していた時に、数回本間千代子さんが来客し、出前の電話を取るほど気さくな方だと父から聞かされていました。私の学生時代には、知恵子みたいな明るく、お節介焼き女子生徒がいて、私は苦手でしたが、今では懐かしく感じます。 |
☆『駆逐艦雪風』【1964年(昭和39年)山田達夫監督】 太平洋戦争で激戦を終戦まで生き抜いく駆逐艦「雪風」の姿を水兵の木田勇太郎（長門勇）視点で描きます。人なっこさと純情さで「雪風」への思いを長門勇さんが好演しています。手嶋艦長役の山内明さんで画面が引締ります。また、艦長の妹の可憐な岩下志麻さんや娘役の1962年の明治製菓のCMに起用され有名になった上原ゆかりさんも出演しています。 |
☆『この空のある限り』【1964年(昭和39年)桜井秀雄監督】 戦争の混乱で行方知らずになった母（田中絹代）と探し求めていた娘（森光子）が再会を描きます。同じ空のもとで生きながらも、同じ時間を生きなかったために娘が母娘の打解けない姿、遠慮のない態度の息子（三上真一郎）と重ね合わせます。最後には、親子は親子と氷解します。田中絹代さんの深みと鰐淵晴子さんの明朗さが印象的でした。 |
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