★『放浪記』木村荘十二監督（1935年） 
【物語】林芙美子の自伝的ベストセラー小説の映画化です。幼い頃から両親の仕事を手伝いながら全国を貧乏な行商生活する小林美佐子（夏川静江）は、男運にも恵まれず翻弄させられます。生きていくために玩具工場やカフェで働き、失恋や生活の辛さを詩や小説に書き続けます。男運の悪い美佐子だが、下宿先の松川（藤原鎌足）だけは親切にしてくれ、最後の拠り所として訪ねるが松川も女房持ちになっていました。失望した美佐子はまた放浪の人生を歩み続けます。
【役柄】玩具工場の女工の監視役です。
★『君と行く路』成瀬巳喜男監督（1936年） 
【物語】元芸者で妾の母親（清川玉枝）に育てられた天沼朝次（大川平八郎）と夕次（佐伯秀男）の兄弟は、いつも妾の子という世間の目を気にしながら生きてきました。朝次にと尾上家の霞（山縣直代）は将来を約束した仲でしたが、霞は父の会社の破産を救うために北海道の資産家の家に嫁ぐことになります。そのため朝次は、将来に絶望して交通事故で他界し、それを知った霞も後を追うように自殺します。女流劇作家の三宅由岐子の遺作「春愁記」の映画化です。
【役柄】朝次と夕次の母親役です。
★『朝の並木道』成瀬巳喜男監督（1936年） 
【物語】千代（千葉早智子）は、親友の久子（赤木蘭子）を頼って上京しましたが、久子がカフェーの女給をしているので驚かされます。しかし、厳しい現実のなかで千代は職探しをします。苦労の甲斐も無く、失業者のあふれる東京では千代も女給になるしか道はありませんでした。千代は親切な常連客の小川（大川平八郎）に心惹かれますが、小川の仙台への転勤で千代は一人取り残されます。しかし、教えてもらった仙台の住所を川に流し、眩しい朝の青空のなか新しい仕事をも求めて、歩み始める千代でした。
【役柄】千代の働くカフェ「ミドリ」のマダム役です。
★『母なればこそ』木村荘十監督（1936年） 
【物語】中道家は、母のちか子（伊藤智子）は金策に駆け巡るほど苦しい中、父の死（御橋公）により没落しる。長女正子（千葉早智子）は一家を支えるために芸妓として働ることになる。そんな折、松井（北沢彪）は小栄龍と再会し、子供ができるが、松井の父（滝沢修）は結婚を許さない。正子は一人で苦労して子供を育てるが、いつも彼女を見守る運転手の山岸（丸山定夫）の姿があった。原作は川口松太郎です。
【役柄】母ちか子（伊藤智子）の芸妓時代の先輩役です。
★『女人哀愁』成瀬巳喜男監督（1937年） 
【物語】楽器店員の河野廣子（入江たか子）は、裕福な家庭の堀江新一（北沢彪）と見合い結婚をします。しかし、嫁ぎ先の家族では廣子を女中のように扱います。そんな嫁ぎ先の冷淡な態度に耐え続けていましたが、義妹（水上怜子）とその愛人（大川平八郎）の問題で新一から叱責されたのを契機に夫と別れ自立する決意をします。戦前の作品としては先進的な内容のように感じます。
【役柄】堀江新一の母親役です。
★『お嬢さん』山本薩夫監督（1937年） 
【物語】上流階級のお嬢さんとして何の不自由なく育ってきた規矩子（霧立のぼる）は、家族から縁談の勧め嫌い、叔父（三島雅夫）に依頼して九州の小島の女学校の英語教師として赴任します。しかし、そのモダンな感覚は東京に憧れる学生の人気者になりますが、次第に現実の社会の厳しさを知り、自分の世間知らずを恥じて教職を去ります。後に社会派作品を多く手掛ける山本薩夫監督の第１回監督作品です。
【役柄】規矩子に縁談を奨める母親・悦子役です。
★『江戸っ子健ちゃん 』岡田敬監督（1937年） 
【物語】横山隆一の同名マンガの映画化した作品です。小学生に入学したケンちゃん（榎本鍈一）とその家族を中心に描いた映画です。隣の角帽を横っちょにかぶったフクちゃん（中村メイ子）らの子供たちの溌溂とした天衣無縫に遊ぶ姿を生き生きと描いています。ケンちゃん役の実の父親の榎本健一が瀬戸物屋のオヤジのドタバタぶりを好演しています。 その他、清川虹子・柳谷寛・柳田貞一・如月寛多・高峰秀子・英百合子・堤真佐子などがいい味を出しています。脚本はエノケン映画を多く監督し、脚本を提供している山本嘉次郎です。
【役柄】ケンちゃんの父親が勤める会社の社長夫人役です。
★『雷親爺』矢倉茂雄監督（1937年） 
【物語】通称カミナリ横丁と呼ばれる東京の下町の商店街には、袋屋の老舗・わらび屋があります。そこの旦那の孝七（徳川無声）は、年中雷を落す雷親爺として近所でも評判でした。しかし、大学の拳闘選手の息子の孝太郎（佐伯秀男）の恋人の相手を勝手に勘違いをする慌て者であり、番頭（大川平八郎）の結婚話を心配する愛すべき人情家でもあります。そんな雷親爺とその家族、商店街の人々との些細な出来事を通して、人情の機微を描いた作品です。
【役柄】孝七と店頭で口論となる産婦人科医院の橘夫人役です。
★『白薔薇は咲けど』伏水修監督（1937年） 
　 銀座の洋品店「マヤ」でお針子として働くの篤子(入江たか子)は、毎朝花屋で白薔薇を一輪買って出勤します。母親の男性との縁が不運なことから男性に不信を抱く篤子は、日曜日も恋人たちの楽しいそうな風景を羨みながらも一人郊外の遊園地に行きます。そこで偶然に淳介(佐伯秀男)を知りあり、食事をし、ダンスホールで楽しい時間を過ごします。しかし、淳介はどこか暗い影を持ちます。翌朝、淳介から白薔薇が届けれ、その手紙には自分は義理から結婚すると書かれており、篤子は気が動転します。皮肉にもマネキンとなった篤子の着たウエディングドレスは、淳介の婚約者が注文します。それとは知らず、篤子は淳介の１日だけの思い出と白薔薇を糧に仕事に精を出します。
 　５月の土曜日から月曜日の３日間の篤子の揺れ動く女性の心理を見事に描き出しています。
【役柄】洋品店「マヤ」でお針子の責任者秋田役です。仕立部の責任者で、働く女性に理解のある上司です、
★『からゆきさん』木村荘十二監督（1937年） 
【物語】明治から大正時代にかけて、島原や天草地方の貧しい農家や漁村の娘たちを貧しさから抜け出すためにの娘たちを外国へ出稼ぎに送出す「からゆきさん」が多くいました。その一人おゆき（入江たか子）、シンガポールで知合ったイギリス人と結婚したが、先たたれて故郷に息子のアントレと帰ってきます。しかし、故郷は偏見から疎外扱いされ、遂に主人の弟にアントレの将来を託すことにし、悲しく別れます。売られていった悲しみと寂しさ、さらに長い苦しみに耐え抜いて里帰りした故郷の厳しさを描いていきます。
　 鮫島麟太郎の原作で、主題歌「からゆきさんの唄」は林伊佐緒の唄でヒットしました。戦後の1972年（昭和47年）の山崎朋子著の「サンダカン八番娼館」で有名になり、田中絹代と栗原小巻で映画化されています。
【役柄】おゆき（入江たか子）のからゆきさん仲間役です。
★『美人島探險「心臟が強い」より』大谷俊夫監督（1937年） 
【物語】存亡危機にある大八足新聞社は、一気に社運を挽回するために、「美人島探検記」を企画して売上げ回復を画策します。社員の中からエンタツとアチャコが選抜され美人島に上陸します。しかし、この島は男性禁制の女人だけの島で、島に行き帰ってきたものはいません。二人は女装して入島しますが、捕虜となりなります。二人は、島から脱出した女性（堤真佐子）を巧みに操り、島から逃げ、その体験記で新聞社は盛り返し、二人は重役に迎えられます。
【役柄】美人島の島人役です。
★『見世物王国』松井稔監督（1937年） 
【物語】田舎から東京見物にやってきたデコちゃん（高峰秀子）一家は、財布をすられます。デコちゃんは家族と離れ離れになり、見世物小屋に潜り込みます。
【役柄】見世物小屋の女芸人役です。
★『ドレミハ大学生』矢倉茂雄監督（1938年） 
【物語】大学生の山野（藤原釜足)と海野（岸井明）は大の親友です。海野は食堂の純子（神田千鶴子）に好意を寄せますが、純子は山野が好きです。しかし、山野は大地主の娘・冴子（江戸川蘭子）を寄せます。しかし、山野にはライバルが多く、なんとか養子になろうと音楽好きの冴子のためにドレミファ学院で音楽の勉強を始めます。
【役柄】ドレミファ音楽院の教師・一二三女史役です。
★『牧場物語 』木村荘十二監督（1938年） 
【物語】戦場で知り合った同郷の軍医・田代（高田稔)から牧場の経営を任された平山（大日方伝）、三吉（小杉義男）、鈴木（三島雅夫）は、悪徳の高利貸の関口（滝澤修）から身を挺して牧場を守ります。
　 戦時中の国民のあるべき姿を描く、戦時色が濃い映画ながら、平山と京子（江波和子）との恋愛、伝染病との戦い、村人との対立と融和、家族の絆などを豊かな自然を背景に描かれています。　若い日の小沢栄太郎や宇野重吉の姿もあり興味深いところです。
【役柄】川瀬未亡人役です。
★『鉄腕都市 』渡辺邦男監督（1938年） 
【物語】高塚隆一（岡譲二）は、正義感の強い有能な新聞記者です。大学時代の友人の不当に低い給料に激怒し、就職を御釈迦にしたり、下宿代の代わりに下宿屋の娘を押し透けれるところを撥ねつけたり、人の気持ちを考えす、正義感の押し売りに、周りに人間は少々霹靂としています。そんな周りの人間の無理解に嫌気がさしますが、頑固者な隆一を評価してくれる会社の社長が現れます。
　冒頭で「国民総動員　帝国政府」のスローガンが現れ、戦争へ向かう時代でありながら、大学生が勉強をせずに遊び惚ける姿や就職のためにコネ探しに翻弄する姿は、いつの時代も変わらないと感じます。隆一の友人の大垣役の嵯峨善兵が、後年の悪役とは違い、のんびりと善人ぶりをいい味を出しています。
【役柄】下宿屋のおばさん役です。
★『胡椒息子 』藤田潤一監督（1938年） 
【物語】裕福な家庭で育った牟礼昌二郎（林文夫）は、我儘な性格で家族を手煩わいます。ある日、昌二郎は父親（徳川無声）と芸妓（伊藤智子）の間に生まれたことを知り、自虐的になり嫌がらせが酷くなり、感化院に送られます。厳しい感化院の生活の中で、先生や仲間との交わりの中で、成長していきます。乳母のこと（清川玉枝）が病気だと知り、感化院を脱走します。迎えに来た父親は、本当の母親と合わせようとしますが、不祥事で家を出た育ての母親（水町庸子）と生活することを望みます。去っていく本当の母親の後姿に寂しさを覚えながらも、人間として大きく成長した昌二郎の姿がありました。
【役柄】乳母のこと役です。準主役で清川玉枝さんを代表する映画の一本です。
★『幼い英雄たち 』藤田潤一監督（1938年） 
【物語】栄吉（中村英雄）は、母（清川玉枝）と妹を房総に残して、江戸に寿司職人になるために「べら棒寿司」で修業をしますが、悪友との付き合いで身が入りません。母と妹が栄吉の元を訪れ、修行に励む姿に安堵しますが、栄吉はやくざの親分（丸山定夫）の悪事を告発しようと殺されます。結局、親分の悪事が露見し、お縄になり、街には明るき活気で満ち溢れます。
【役柄】栄吉の母親役です。
★『田園交響楽 』山本薩夫監督（1938年） 
【物語】北海道に住む日野東作（高田稔）は、極寒の中の盲目の少女雪子（原節子）と出会い引取ります。妻敦子（清川玉枝）とは冷めた夫婦関係が生じますが、東作は愛情を注ぎます。迷った挙句に眼の手術し成功します。しかし、開眼の日に東作は東京の病室にはおらず、北海道へ戻りますが寒さの中、思い出と共に永遠の眠りにつきます。
【役柄】日野東作（高田稔）の妻敬子役です。
★『その前夜 』萩原遼監督（1939年） 
【物語】新撰組が1864年に起こした池田屋襲撃事件を、斜向かいの京都木屋町にある宿屋・大原屋の視点から描いた作品です。前年に戦病死した山中貞雄監督の遺稿を梶原金八）がシナリオにしました。
　 池田屋の近所の宿屋の大原屋で家族同然の長居客・画家の滝川仙太郎（河原崎長十郎）は、新選組に襲われた勤皇派の武士を助けます。その時にすぐ近くで池田屋騒動事件が勃発します。池田屋襲撃事件の前後の様々な人間模様を丁寧に描いた作品です。
【役柄】宿屋・大原屋の女将おまさ役です。
★『若い仲間』佐藤武監督（1939年） 
【物語】福島善三（御橋公）は、妻貞子（村瀬幸子）、長男俊夫（月田一郎）、長女光子（里見藍子）、次男吾郎（伊藤魁薫）の五人家族です。高田の伯母さん（清川玉枝）が、お転婆で明朗な光子に話しを持込ます。見合いで光子と佐山（池康雄）は相愛の仲になりますが、家の格が違うことを理由に断られ、光子は塞込みます。そんな光子を父や俊夫は、テニスを通して温かく見守り、また、俊夫の同僚の宮崎康雄（大川平八郎）が光子に好意を寄せていることを知らせます。
　温かく光子を見守る父と兄の姿を中心に明るく描いています。特に骨董に現を抜かしながらも、家族を温かく見守る父役の御橋公が好演しています。
【役柄】光子に見合い話を持込む高田の叔母役です。
★『女の教室　学校の巻　七つの俤』阿部豊監督（1939年） 
【物語】医専と呼ばれた女医専門学校のミッションの学校を舞台とした女性七人の卒業までの様々出来事を描いた作品です。首席を争うライヴァルだ同士の轟有為子（千葉早智子 ）と蝋山操（竹久千恵子）の二人に加えて、仁村藤穂（霧立のぼる）、羽生与志（神田千鶴子）、細谷和子（椿澄枝 ）、伊吹万千子（ 里見藍子）、そして台湾からの留学生の陳鳳英（原節子）の七人は、入学当時からの仲よしグループでした。この七人の女性の卒業までの葛藤と友情を丁寧に描いた作品です。原作は吉屋信子です。
【役柄】伊吹万千子（ 里見藍子）の母親役です。
★『愛の設計』藤田潤一監督（1939年） 
【物語】内山かつ子（竹久千恵子）は、由緒ある家ながら事業が窮地に立つ今宮幸雄（月田一郎）と結婚しますが、かつ子を庶民で女給の経験でから姑のよし子（清川玉枝）は、毛嫌いします。義理の妹夫婦の借金の申出に協力しなかったことから、ますますかつ子と姑の間は悪化します。一方、かつ子の妹・なつ子（若原春江）は、幼馴染の中根成一（佐伯秀男）と幸せな結婚します。幸雄は事業を精算することになりますが、かつ子の励ましと子供誕生でで、再出発を誓い、姑の仲も修復されます。内山家には幸福な時間が訪れます。
【役柄】かつ子（竹久千恵子）の姑よ子役です。
☆『裸の教科書』渡辺邦男監督（1939年）
【物語】 工藤博（佐伯秀男）は、大金持ちの息子として何不自由なく生活していましたが、友人の谷口（大川平八郎）は、工藤個人にではなく、お金に対して敬意を人々は払っていると言い、喧嘩となります。しかし、一計を案じた博は、家を出て自活し、金持ちの塩田家の家庭教師となり、裸の自分の実力を測ろうとします。そして、最初は反発をしていた塩田家の我儘娘の和子（霧立のぼる）も博の魅力に惹かれていきます。清川虹子さんとのツーショットも見物です。
【役柄】金持ちの谷口家の妻・貞子役です。
☆『プロペラ親爺』渡辺邦男監督（1939年）
【物語】高利貸しでケチの樫村金兵衛（柳家金語楼）の財産を、近所に住む親戚たちが狙い、愛想良く金兵衛にゴマをすります。そこに、両人に死に別れた姪の女子学生の敏子（若原春江）が金兵衛を頼ってきます。純真な女学生の敏子の願いを聞き入れて、金兵衛に飛行機「愛国号」を献上することに決めます。
【役柄】樫村金兵衛（柳家金語楼）の従妹のおまさ役です。
☆『金語楼の大番頭爺』岡田敬監督（1939年）
【物語】箱根の橋本旅館で働き者だがとても頑固な大番頭の金五郎（柳家金語楼）のもとに、大学生の若旦那の案信一（三木利夫）が結婚したいと来るが、親代わりとして、なかなか首を縦に降りません。贋小観騒動や時計紛失などてんてこ舞いの時に、信一は再び東京から恋人秋子（若原春江）を伴っての帰ってきます。実はその娘こそ大番頭の幼い頃に別れ離れなっていた娘で、二人は感涙の再会をします。
【役柄】橋本旅館に泊まる成金の妻役です。



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