日本映画ロケ地探訪 〜ロケ地の風景の変化に見る歴史〜 　映画ロケ地探索【長野県・東信上田市（戦後）編】  【長野県上田市】 　 上田市は、長野県の東部に位置し、人口は約15万人（2022年現在）です。千曲川の左岸の塩田平は古代に湖底で、鎌倉時代の執権北条氏の一族塩田北条氏の所領で「信州の鎌倉」と飛ばれています。また、千曲川の右岸は戦国時代に真田氏が海岸段丘を利用して築いた上田城を中心とする城下町です。 　 上田市では戦前から多数の映画やテレビドラマのロケが行われています。城下町の街並と豊かな自然の中でドラマは展開していきます。また、上田市は 映画やドラマのロケ地の誘致が盛んで、戦前の1933年の五所所平之助監督『愛撫（ラムール）』を始めとして、映画『青春とはなんだ』（1965年）や『成熟する季節』（1963年）『けんかえれじ』（1966年）など多くの作品の撮影場所になっています。その理由としては、�@戦前の養蚕業などの経済的発展、�A東京から比較的近い、�B少雨で晴天率が高い、�B豊な自然と古い町並みの景観、�C行政を含めたサポート体制が挙げられます。映画ロケ地の今昔だけでなく、古代は湖底の塩田平や千曲川の河岸段丘の地形資質、現在も戦前の作品のロケとなった郷野も現存する養蚕業などの歴史も深い楽しむことができます。 　 1960年代の上田市内の市街地の様子は、映画『成熟する季節』（1963年）やテレビドラマ『山のかなたに』（1966年）で堪能することができます。 　映画『次郎物語』（1955年） ☆『次郎物語』【1955年(昭和30年)清水宏監督】 【概要】 　 乳母の家に里子に出された少年次郎（大沢幸浩）が生家に帰えります。しかし、周囲に馴染めない次郎が次第に成長していく姿を描きます。原作は下村湖人著の同名小説です。 【ロケ地】 　 ロケ地（舞台）は現在の上田市周辺です。生家は上田市生田飯沼付近の農家＜戦前の島耕二監督映画『次郎物語】（1941年）、映画『母の地図』（1942年）と同じロケ地です＞、少年が暮す造り酒屋は上田市中野の「若林醸造」で背後には独鈷山が見えます。また、馬車道は生田「長野県道169号南原長瀬線（飯沼神社入口）」、少年がランニングをするのは生田「長野県道186号」、遠足は「上田城址公園」付近、望月優子を見送るのは小島「薬師堂」付近です。 　映画『不道徳教育講座』（1959年） ☆『不道徳教育講座』【1959年（昭和34年）西河克己監督】 【概要】 　 三島由紀夫著の同名小説の映画化です。社会的な道徳観念を風刺的に描いています.。大坂志郎さんは文部官僚と詐欺師の対照的な二役で出演しています。また、原作者の三島由紀夫さんも出演しています。 【ロケ地】 　 ロケ地は、東京都の国立市・立川市と長野県上田市周辺と小諸市です。上田市内では、上田城跡、旧上田市市庁舎、蛭沢川沿いの袋町（現；中央3丁目）付近、上田駅前から松尾通り（現：長野上田線）などでロケが行われています。松尾通りの国指定登録有形文化財「みすゞ飴本舗 飯島商店 上田本店」（大正13年竣工）なども見られます。 　映画『水で書かれた物語』（1964年） ☆『水で書かれた物語』【1964年（昭和39年）吉田喜重監督】 【概要】 　 松谷静雄（入川保則）は、母静香（岡田茉莉子）への事情の深さから不倫関係の橋本伝蔵（山形勲）への憎悪と婚約者橋本ゆみ子（浅丘ルリ子）との義母兄弟への疑念位悩まされます。静雄の回想でその経緯と無残な結末を描いていきます。石坂洋次郎原作作品では異色作を吉田喜重監督が独特の映像で描いていきます。 【ロケ地】 　 ロケは長野県の上田市周辺で行われています。八十二銀行上田支店付近、今は無き海野町「ほていや百貨店」の店内と屋上遊園地、1974年に廃線になった上田交通真田傍陽線の北上田駅付近です、 　 また、松谷静雄（入川保則）と橋本ゆみ子（浅丘ルリ子）の逢瀬をする旅館は、長野県小県郡青木村の田沢温泉「たまりや旅館」（2022年現在旅館営業を終了）でロケが行われています。「たまりや屋旅館」は、明治時代に建てられた木造建築です。門の欅や建物内部の松材の階段の踏み板、手摺り、欄干などの装飾も秀逸です。最盛期には、テニスやバレーのコート、温泉プールもあったそうです。 【上田市中心街の今昔】 　 ロケは長野県の上田市周辺で行われています。銀行員の松谷静雄（入川保則が働く設定の八十二銀行上田支店付近、今は無き海野町「ほていや百貨店」の店内と屋上遊園地、母静香（岡田茉莉子）の自宅の設定の1974年に廃線になった上田交通真田傍陽線の北上田駅付近でロケが行われています。 【青木村「田沢温泉」の今昔】 　 松谷静雄（入川保則）と橋本ゆみ子（浅丘ルリ子）の逢瀬をする旅館は、長野県小県郡青木村の田沢温泉「たまりや旅館」（2022年現在旅館営業を終了）です。「田沢温泉」は、飛鳥時代後半の開湯とされ十観山の山間にある温泉です。島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に登場する「ますや」など歴史的な木造建物が建ち並んでいます。温泉は、ph9.6でアルカリ性硫黄で、36℃〜40℃のぬるま湯で、美肌の湯として有名です。 　映画『青春とはなんだ』（1965年） ☆『青春とはなんだ』【1965年（昭和40年）舛田利雄監督】 【概要】 　 石原慎太郎さん原作の映画化です。米国帰りの英語教師が古い因習の残る地方の高校に赴任ぢ、生徒たちと新しい時代を切り開いていきます。 【ロケ地】 　 ロケ地は長野県上田市が中心に行われました。石原裕次郎さんが赴任する高校は上田市立北小学校でロケが行われました。また、野球部とラクビー部の仲裁に入る石原裕次郎と走る場面、赤丸：上田城跡公園の堀に架かる歩道橋、緑丸：上田招魂社。です。（国土地理院の1965年11月4日に撮影の上田市空中写真（MCB657X））。 【上田市「上田市立北小学校」の今昔】 　 石原裕次郎さんが赴任する高校は上田市立北小学校でロケが行われました。同地は初の日活の自主製作のテレビドラマ『山のかなたに』（1966年）の信濃高校のロケ地でもあります。【右画像：2021年（令和3年）5月15日撮影】 　映画『けんかえれじ』（1966年） ☆『けんかえれじ』【1966年（昭和41年）鈴木清順監督】 【概要】 　 昭和初期の岡山中学で「喧嘩キロク」と呼ばれた喧嘩好きの南部麒六（高橋英樹）の青春を下宿屋の娘・道子（浅野順子）との恋愛などを交えて描きます。 【ロケ地】 　 上田市周辺では、喧嘩修行中の高橋英樹は旧北国街道上や高橋付近を威風堂々と歩き、上田城跡公園では父と語り合い、高橋英樹は合図喜多方高校の初投稿の日に起こりながら「新参町」付近を歩きます。また、高橋英樹が叔父と歩くのは常盤城「向源寺」付近、高橋英樹が喧嘩の待ち伏せをするのは上塩尻の国鉄（現：しなの鉄道）沿い、初登校で喧嘩を売られるのは上塩尻も旧北国街道沿い、会津喜多方中学の校門は「上田藩主居館跡（現：上田高校）」です。 【上田市「高橋」「新参町」付近の今昔】 　 喧嘩修行中の高橋英樹は、威風堂々と「旧北国街道」沿いや「高橋」付近を歩きます。高橋英樹は合図喜多方高校の初投稿の日に起こりながら「新参町」付近を歩きます。 　映画『犬神家の一族』（1976年） ☆『犬神家の一族』【1976年（昭和51年）市川崑監督】 【概要】 　 犬神家を巡る相続争い事件を私立探偵の金田一耕助（石坂浩二）が解き明かしていきます。原作は横溝正史著の同名小説です。 【ロケ地】 　 ロケ地は主に長野県です。上田市の旧北国街道沿い（常田・柳町）の古い街並、国鉄（現：しなの鉄道）の「大屋駅」（ホーム）や「篠ノ井駅」（駅舎）などです。